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大隈先生の摂食障害講義

ちょっと前の話になりますが副院長の大隈和喜先生が、若手医師向けに摂食障害の講義をしてくれました。大隈先生は心療内科医として長年、摂食障害の診療に携わってこられました。摂食障害、中でもその中核群である神経性食欲不振症は、精神疾患の中でも特に治療の難しい大変な病気です。僕も若い頃、精神力動的なアプローチからの治療の本などを読んで、それはそれで面白かったのですが、よっぽど患者さんと(精神的に)取っ組み合いのような治療者患者関係になって、山あり谷ありの道筋を辿らなければ治っていかないんだろうと感じていました。そのまんま、摂食障害の治療にしっかり携わる機会は無くこの年になるまで仕事してきたわけですが、大隈先生の講義を聞いて、色々「そうだったのか」と目からウロコが落ちる思いがしました。
大隈先生が、先生のお師匠さんの深町建先生から学んだ理論によると、典型的な神経性食欲不振症の経過は「発端→やせの蜜月期→蜜月期の破綻→過食衝動の出現、悪い自分(人格の分裂)の出現」という決まったパターンを辿るようです。それぞれの経過の出現にはすべて生理学的な理由があり、例えば「やせの蜜月期」は飢えかけた動物が残りのエネルギーで効率良く食べ物を見つけようと集中力のスイッチを入れている状態にあたるそうです。あたかも人格が分裂したようになって「悪い自分」が出現し、行動をコントロールしてしまう心理状態は、摂食障害の患者さんでは高頻度に体験されることのようです。また、病気を「悪い自分」と見立てて外在化して立ち向かう手法は、治療者、患者ともに取り組みやすい枠組みだと思われます。患者さんとご家族へ、病気の正しい知識と明確な治療法を提示した上で、しっかりとした枠組みの中で治療を行っていくスタイルは、無意識の転移・逆転移を取り扱う力動的アプローチと違ってクリアカットで分かりやすく、若手医師にも取り組みやすいものだと思いますし、近年は精神科でもトラウマ・インフォームド・ケア等の心理教育的手法が発達してきて、こちらの治療スタイルに寄ってきているのではないかと感じます。詳しい理論を知りたい場合は、古書ですが深町先生の著作を読むと良いようです(「摂食異常症の治療」「続・摂食異常症の治療」深町建,金剛出版)。
「理論を理解した上で新患の陪席についてもらったら、何をやっているのかよくわかるから」と若手向けに行っていただいた講義で、僕が先生の講義を聞くのは2回目ですが、あらためて勉強になりました。すでに先生の診療の陪席についている若手もいるようです。大隈先生、これからもよろしくお願いします!

福間病院 臨床研修センター長
鈴木 宗幸


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