精神科/心療内科/児童思春期精神科/内科/歯科 福間病院医療法人 恵愛会 福間病院

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家族相談会第8回目を開催しました!

ご家族の皆様にお集まり頂き、令和元年度家族相談会の8回目を1月10日金曜日に開催しました。当相談会は、統合失調症の患者さんを抱えるご家族対象の、必要な情報の共有と仲間作りを目的とした集まりです。今回は22家族26名のご参加をいただきました。今年度の最終回ということで、外部講師としてリカバリーセンターくるめ施設長、日本ピアスタッフ協会会長の磯田重行さんにお越し頂き、「誰もが自分の力を信じ、元気で自分らしく生きる」と題して、特別講演をして頂きました。
自らの闘病体験と、それを乗り越える過程は、とても説得力のある内容でした。当初は、病気になってこんなに辛いのは自分だけ、不幸な家族はうちだけだと感じていたそうですが、デイケアで仲間と出会い、同じような人がいるんだと実感し、頑張っている先輩メンバーをみて、「この人たちのように社会復帰したい」と思えるようになったそうです。また、当事者活動に関わるようになってお互いの苦しみや、病院、行政への意見など忌憚なく話し合う、メンバーの姿に、「当時は精神障害になったら社会の片隅で、周囲に迷惑かけないようにひっそりと生きていかなければならないと感じていました。権利を主張しても良いんだとびっくりした」と当時のカルチャーショックの体験を語られました。その後、精神障害者手帳を取得した際には、病気である自分を受け入れ、気持ちの上で色々なことを諦めたそうです。「諦める」ということはとても困難でつらい決断でしたが、今ふりかえって、そこから全てが始まったと思える、病気になったことはずっと不幸だと思っていたが、20年経った今、「病気になってよかったこともある、今は自分に与えられた使命をしっかりやっていこう」と思えるようになったと、自らのリカバリー体験を実感をもった言葉で語られていました。
その後WRAPと出会い、ファシリテーター養成研修を受講。「自分は自分で良い。自分にももっと出来るかも」との感覚を持てるようになり、ピアスタッフとしてキャリアを積まれ、役割、責任を任される中で働く力、頑張る力が次第に戻ってきたそうです。最初は短時間勤務だったのが、いつか施設の統括、新規事業の立ち上げまで任されるようになられ、2017年度から日本ピアスタッフ協会の会長にも就任されました。現在日本において、ピアスタッフは医療の現場には少ないが、福祉の現場には多いそうです。まだ全国できちんと制度化されていない、発展途上の段階ですが、今年札幌で「第8回全国ピアスタッフの集い」が開かれる予定で、次回は福岡での開催を企画中だそうです。ピアスタッフの大きな役割のひとつは、自らのリカバリーストーリーを語り、利用者のモデルになること、新しい支援の形を作り、現場の価値観を変えていくことだと話されていました。2017年に立ち上げたリカバリーセンターくるめは、磯田さんも含めて過半数の職員がピアスタッフであり、まずはスタッフが元気であることをモットーに、プログラムはあくまで枠組みであり、個別の対応を大事にして日々運営しているそうです。
自らの実体験と歩みを飾らずに訥々と語る磯田さんの姿は、大いなる説得力を持って響くものがあり、ご家族の皆様もスタッフ一同も50分程の講話を熱心に聞き入っていました。その後、ご家族数名ずつにわかれて、講話を聞いてどう思ったか、感想を話し合ってもらいました。その後の質疑応答では、磯田さんが薬をどのように減らしていったのか知りたいとか、自己肯定感を本人も家族も育むためにはどのようにしたらよいのかなど、色々な質問も上がりました。今年度の最後の集まりに、当事者からのリカバリーの生の体験を聞くことで、非常に触発される相談会となりました。
毎回運営していて思うことは、この家族相談会が、ご家族自身の持っている力、ご家族同士で支え合う力を、我々スタッフが実感する場であるということです。ご家族を支援する場であるのに、こちら側がご家族から学びをもらい、自らの精神科医療職としての価値観を再構築する良い刺激をもらっているのは不思議なことだと思います。支援者、被支援者の垣根を越えて、人同士としてつながり会うことの出来る場を、今後も継続、発展させていきたいと思っています。 令和2年度の家族相談会は6月から開催の予定です。3月頃から院内各部署にポスターの案内を貼り出しますので、スタッフにお気軽にお問い合わせ下さい。

文責:鈴木宗幸