福間病院 福間病院精神科
専門研修プログラム

医療法人恵愛会福間病院

臨床研修センターだより

2022年センター長挨拶

当院の精神科専門研修プログラムのホームページに目をとめて頂きありがとうございます。日本専門医機構による新専門医制度が発足して5年目の春を迎えます。当院のプログラムの特色は、確かな資質と能力を持った精神科臨床医を育てるための、徹底した現場でのトレーニングです。今年度は新たに3名の新入職の先生と、福岡大学から1名の研修の先生をお迎えすることが出来ました。
今年度から研修内容に大幅な変更を加えました。これまで専攻医の先生方にはスーパー救急病棟の専属医として、急性期の入院治療を中心に研修を行ってもらっていましたが、コロナ禍でこの2年間、入院件数が減少したことと、研修する先生の人数が増えたことで、一人当たりが担当する症例数が減ってしまい、研修の密度が薄くなってしまう問題が生じました。そのため、研修のフィールドを4つに広げ、多角的に様々な経験を積んでもらうことにしました。1つ目はこれまで通り、スーパー救急病棟で急性期症例の担当です。急性期は患者さんの病像、精神症状が短期間で劇的に変化し、治療の効果やゴールも見えやすいため、初学者が経験を積むのに最適です。当院は地域の精神科中核病院であるため、様々な病態の患者さんが入院してきます。マンパワーとハード面の整ったスーパー救急病棟で、主治医として責任を持って患者さんを退院まで担当することで、精神科医療のもっともダイナミックな側面を学ぶことが出来ます。困った時は指導医に相談し、精神科医としての面接の技術はアドバイザーから実践を通して学びます。当院の強みである多職種チームと日々協働するのも、この場です。患者さんを第一に考えた看護を展開する看護師チーム、健康な面を引き出しリハビリテーションの礎を作る作業療法士、地域社会への復帰を進める精神科ソーシャルワーカー、そして公認心理士などの多職種チームの中で、チーム医療を実践できる精神科医としての素養を鍛えます。
2つ目のフィールドは外来です。自らが担当した入院患者さんの退院後のフォローアップを行うことはもちろん、様々な症状、不調を抱えた外来新患を1年目から診察します。最初は先輩医師の新患の予診を取り、本診に陪席して自らの病歴聴取と先輩のそれとを照らし合わせます。新患診察は必要な情報を聴取し、診断と治療方針を組み立てることに加え、患者さんと主治医との間で治療関係を結ぶ大切な時間です。自らが主治医となったらどうするのかを念頭に置き、先輩医師の診察から真剣に学び取ってもらいます。力がついてきたら、先輩医師の指導の下、主治医としてフォローアップを担当する段階へと移行します。
3つ目のフィールドは療養病棟です。病状の重さや社会的要因から入院が長期化せざるを得なかった患者さんを担当することで、急性期とはまた違った困難さを直に体験してもらいます。陽性症状や認知機能障害を抱えながらも、日々の病棟の現実生活を生きる患者さん達から学び取れることは多くあります。
4つ目のフィールドはデイケアです。デイケアは利用者さんの病気の側面よりも、健康な側面に焦点を当ててリハビリテーションを進める、とても大切な部門です。我々医師は職業柄どうしても、患者さんの症状や病気に目を向けがちです。病気を治そうとするあまり、患者さんの保持している健康な側面に目がいかないことで、回復の糸口を見逃してしまう落とし穴が存在します。デイケアで利用者さん達のグループに一スタッフとして参加し、一緒にスポーツをしたり、SST等でロールプレイやディスカッションをする経験から、入院や外来では見えてこなかった生き生きとした個性や強みを体感することが出来ます。利用者さん同士が主体性を持って交流し支え合う、デイケアならではのグループの力も感じ取ることが出来るでしょう。
以上述べたように、当院で展開される様々な医療現場を精神科医の教育のために全開放していくという、いわば挑戦的な試みを4月から新しくスタートしたばかりですが、研修内容は今後も先生方の意見を聞きながら適宜修正を加えていく予定です。専攻医の先生方には忙しくも豊かで充実した研修を過ごしてもらいたいと思っています。2023年度の専攻医の募集は8月から開始しますので、少しでも興味を持たれた研修医の先生は是非早めに見学に来てください。精神科医としての確かな臨床能力を身に付けたいと思っている、やる気のある先生方を募集します。精神保健指定医、精神科専門医の取得はもちろん、劇的に変化していく令和の時代に対応して、患者さんのために臨床を実践していける資質を持った精神科医を目指して、初めの一歩を当院から踏み出してみませんか?精神科臨床を志す皆さんの見学、応募を心よりお待ちしています。

福間病院 臨床研修センター長
鈴木 宗幸